こんにちは、井上です。15年以上エステ業界でディーラーとして活動してきた中で、開業相談を受けるたびに必ず出てくる話題が「価格設定」です。
「相場より安くした方が集客しやすいですか?」「この地域で〇〇円は高いですか?」——こうした質問をよく受けます。今回は、ディーラーとして数えきれないほど多くのサロンを見てきた立場から、価格設定の考え方をお伝えします。
「相場で決める」の落とし穴
価格設定で最もよくある失敗が、地域の相場だけを参考に価格を決めることです。
たとえば「この地域のフェイシャルの相場は6,000円だから、うちも6,000円にしよう」という決め方です。一見合理的に見えますが、この方法には大きな落とし穴があります。
⚠️ 相場で決める3つのリスク
- 競合と同じ価格=差別化ゼロ:なぜそのサロンを選ぶ理由がなくなります
- コストが違うのに価格が同じ:立地・商材・施術内容が違えば、同じ価格でも利益率はまったく異なります
- 「価格を合わせる経営」から抜け出せない:競合が値下げするたびに自分も下げる悪循環に入ります
相場は「参考」にする程度でOKです。価格を決める軸は、あくまで自分のサロンのコストと提供する価値に置いてください。
まず「コスト計算」から始める

価格設定の出発点は、1回の施術にかかるコストを正確に把握することです。ディーラーとして多くのオーナーさんの相談に乗ってきた経験から、コストを把握していないまま価格を決めているケースが本当に多いと感じています。
① 商材・消耗品コスト
1回の施術で使う商材・消耗品の費用を計算します。
| アイテム | 1回あたりの使用量の目安 | 計算方法 |
|---|---|---|
| クレンジング・洗顔 | 3〜5ml程度 | 商品価格÷ml数×使用量 |
| 化粧水・美容液 | 2〜5ml程度 | 同上 |
| マッサージクリーム | 5〜10g程度 | 同上 |
| パック | 1枚 | 1枚あたりの単価 |
| コットン・消耗品 | 数枚 | 1回あたりの消費量×単価 |
これらを合計したものが「材料費」です。一般的にサービス業の材料費率は売上の10〜20%以内が目安とされています。
② 時間コスト(自分の人件費)
「自分はスタッフじゃないから人件費はかからない」と思っているオーナーさんは要注意です。自分の時間にも価値があります。
ℹ️ 時間コストの計算例
目標月収30万円 ÷ 月の施術可能時間(例:80時間)= 1時間あたり3,750円
60分の施術なら、自分の時間コストは3,750円
③ 固定費の按分
家賃・光熱費・通信費・各種サブスクなどの固定費を、月の施術回数で割ります。
ℹ️ 固定費按分の計算例
月の固定費合計:10万円
月の施術回数:50回
1回あたりの固定費按分:2,000円
④ 利益を乗せる
①②③を合計したものが「最低価格(原価)」です。ここに利益を乗せたものが販売価格になります。
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| ① 商材・消耗品コスト | 800円 |
| ② 時間コスト(60分) | 3,750円 |
| ③ 固定費按分 | 2,000円 |
| 合計(最低価格) | 6,550円 |
| 利益20%乗せ | 約8,200円 |
この計算をすると、「6,000円のメニューでは赤字になる」「8,000円は最低必要」という判断ができます。
機器を導入している場合の価格設定

美容機器を導入しているサロンは、機器のコストも価格に含める必要があります。これを忘れているオーナーさんが非常に多いです。
⚠️ 機器コストの計算を忘れると…
100万円の機器を月10回使用する場合、回収に何ヶ月かかるかを計算していないまま「機器を使った施術だから少し高めにしよう」と曖昧に価格を決めるケースがあります。これでは回収できているかどうかもわかりません。
ℹ️ 機器コストの按分計算
機器代:100万円 ÷ 回収目標:12ヶ月 ÷ 月の使用回数:20回
= 1回あたりの機器コスト:約4,200円
この4,200円を通常の原価計算に加算した上で価格を決めます。
「安すぎる価格」が招く3つのリスク
「お客様を呼ぶために最初は安くしよう」という考えは一見合理的ですが、リスクも大きいです。
- 価格帯に合った客層が集まる:安い価格には「安さを求める層」が集まります。後から値上げしようとすると離れてしまいます
- 自分が疲弊する:安い価格で多くの施術をこなすと、体力的にも精神的にも消耗します。「忙しいのに利益が残らない」状態が続きます
- 値上げがしにくくなる:一度設定した低価格は、既存のお客様への説明が必要になり、値上げのハードルが上がります
価格を上げるタイミングと伝え方

適切なタイミングで価格を見直すことは、長く続けるサロン経営に必要なことです。
値上げのタイミング目安
- 予約が常に満員・キャンセル待ちが出ている
- 商材費・光熱費などのコストが上がった
- 技術・知識・サービスが向上した
- 開業から1〜2年経過して実績が積み上がった
お客様への伝え方
「〇月より、より良いサービスを提供するため、一部メニューの価格を改定させていただきます。より質の高い商材の使用と、技術向上のための研修費用に充てさせていただきます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。」
「値上げします」ではなく「より良いサービスのための価格改定」として伝えることで、お客様に理解していただきやすくなります。
価格設定の相談もJELで
「自分のサロンの適正価格がわからない」「今の価格でやっていけるか不安」——こうした相談もLINEから気軽にどうぞ。コストの計算から一緒に確認します。
この記事のまとめ
- 相場を参考にするのはOK。ただし決める軸は自分のコストと提供する価値
- 価格設定は「商材費+時間コスト+固定費按分+利益」で計算する
- 機器を導入している場合は機器コストの按分も忘れずに
- 安すぎる価格は客層・疲弊・値上げ困難のリスクがある
- 予約が満員・コスト増・技術向上のタイミングで価格改定を検討する





